第2話 森の熊さん
 あるーひ、森の中、熊さんに、であった♪
 ぎゃー!
 それはいつものように家の近くに見つけた小川で水汲みをしようとしていた時のことだった。青いポリバケツを持って屑鉄カゴと共に小川にやってくると、そこには先客が待っていた。
 体を覆うの茶色の毛並み、丸い耳がチャームポイントのそれは熊と呼ばれる生物である。こちらに気付いたのか、のっそりと振りかえったそれは、鋭い牙を見せ方向をあげた。
「ぐおぉぉぉぉぉ」
「ぎゃー!」
 きしくも声が重なった。油断していた。ここにすむこと1週間。猛獣に合わないことからここは安全だと思い込んでいたようだ。まさか熊にであうとは。
 しかも、この熊やたらでかいときている。助けを求めるように俺は横にいる屑鉄カゴを見た。背丈は俺の半分程度。ものすっごく小さい。なんて頼りがないのだろう。
 いやいや、相手は熊だ。所詮サイズが2/2のバニラ(特殊能力なし)。タフネスは同じだがパワーは屑鉄カゴの方が大きいはずだ。相打ちは取れる。
「ゆけ、屑鉄カゴ。熊を倒せ」
 超えたからかに命令する。その声に従い、屑鉄カゴは熊に飛びかかるが、
 バシッ
 あっさりと殴り飛ばされた。脇の木にぶつかってガコーンとこ気味良い音を立てる。
 さーっと顔から血が引くのが分かった。これは絶体絶命のピンチではないでしょうか。屑鉄カゴがまったく役に立ってない。しかし、かなわないということが分からないのか、屑鉄カゴは俺の命令を達成するために、すぐに立ちあがって攻撃を加えようとする。
 そうだ、こんなときは!
 体の中の堰をきる。あふれ出てくるのは緑の魔力。相変わらずなれないその感触に堪えながらも懐から一枚の紙を出すと魔力を通した。
「巨大化!」
 声に応じるように紙が一瞬にして光のしずくとなる。その瞬間、異変は起こった。熊の体がどんどん小さくなっていく。いや、違う。屑鉄カゴの体がでかくなっているのだ。
 物理で習ったように力は質量と速さの二乗に比例する。屑鉄カゴはその質量を活かし、熊へと致命的な一撃を食らわした。血が周りに飛び散る。屑鉄カゴが手をどけたそこには、体の変形した熊の躯が転がっていた。呪文の効果がきれ、萎んでいく屑鉄カゴの体を見ながら俺は思った。今夜は久しぶりに肉が食べれると。

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