エピローグ
俺は卑怯者だと、しょげ返るアリサの後姿を見ながら思った。
俺は自分の迷いからプレシアを止めれなかったことをアリサに伝えることができなかったのだ。もし、このことを告げたとき、彼女がどんな目で俺を見るのか想像するだけで怖かった。自分の罪を理解しているだけに恐怖する。
俺はあの時、プレシアが虚数空間に落ちる姿を見て、安堵さえ覚えていたのだから。
ああ、これでフェイトはこんどこそ傷つかなくてすむようになるんだと。
自分のせいで幸せになる未来が変わってしまうことが怖かった。
あの時の迷いはきっと俺自信のそういった恐怖心が生んだものなのだろう。
このことをアリサにだけはいつか伝えなければいけないと思う。
ただ、それを今行う勇気は俺にない。
崩れ落ちる時の庭園を見ながら、手を強く握り締めている彼女。その心は悔しさで満ちていることであろう。
その小さな背中にどんな声を掛ければいいのだろうか?
ありきたりな慰めの文句ですら言うのが憚られた。
どんな言葉であろうとも、この口が言うのが許されないと思ったからだ。
俺に出来たことといえば、ただ彼女の横に立っていることだけだった。