閑話2

 訓練を始めてから一月ほど。生徒たちは順調に成長をしていた。
 二人とも魔力の扱いになれ、アリサにいたっては3マナの魔力まで制御が可能となっている。だが、問題がないといえば、そうではない。なんだがもう一人の生徒、シルフィの元気がないのだ。どうやら自分とアリサを比べて焦りを感じているらしい。
「なあ、お前ちゃんと寝ているか?」
「ええ、大丈夫です」
 シルフィはそう言って笑うがとても信じられない。目の下には濃い隈ができていた。
 恐らくそれは、勉強と符の作成に睡眠時間を裂いているためだろう。アリサに比べてシルフィは魔法の感覚を覚えるのが遅い。ならばと練習を重ねるためにこうやって大量の術符を毎授業に用意しているのだ。
 魔法行使の個人練習は認めていない。彼女達の魔法制御は完璧ではなく、どうしても俺が見ている必要があるからだ。
「お前の焦りは分かるが、そんなことをしても効率が落ちるだけだぞ」
「でも、私はアリサちゃんみたいに才能がないから努力をするしかないんです」
 まるで、なのは3期に出てきた某ガンナーみたいな台詞をいう。だが、いくら口で大丈夫といってもこのままでは潰れるぞ。
 初めて持った生徒。そんな姿は見たくない。彼女を説得できないだろうか。
「才能、ねえ。
 ミッドチルダ式はどうかは知らないが、俺の使う魔法体系では扱える魔力量あまり関係ないと思うけどな」
「そんなこと言ったって、魔力がなければ使えない魔法が多いじゃないですか」
「だが、それが使えたからといって強いというわけじゃない」
 MTGにはさまざまな種類のデッキがある。コストの低い呪文で速攻をかけるものから場を自分の都合の言い様にコントロールするものまでさまざまだ。しかし強いデッキがマナを多く必要とするかといえばそうではない。事実ある年のエクステンデッドで優勝したデッキはタルモゴイフという軽クリーチャーを中心としたデッキだった。
「例えばだ。彼女が2マナの呪文、火葬を放ったところでお前が巨大化で強化したクリーチャーを焼くことはできない。
 つまり、お前の防御を超えることはできないんだ。炎の投げやりを放ったところで巨大化を二回同時にかけてやればいい」
 まあ、そのためには分割思考をできるようにならなければいけないが。彼女達はまだ分割思考を手にいれていない。ゲームでいうなら手札一枚で戦っている状況だ。アリサの成長がシルフィに比べて早いといってもそんなもの。例え多くも魔力を扱えたとしても、カウンター一発で終わらせることができる。相手が色が分かっていれば防御円をはってやってもこと足りる。
「扱える魔力が多くなければ、手数で攻めればいいだけだ」
 そのことを伝えたうえで俺は安心させるように彼女の肩を叩いた。

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