閑話3

「なあ、アリサ。そろそろDVD返してくれないか?」
「今日持ってきてるわ。はい」
 それはある日の講義後のこと。俺はアリサになのはのDVDを貸しっぱだったことを思いだし、彼女にそのこと聞いた。するとアリサはちょうど持ってきてくれていたらしく、持っていたかばんからDVDを出してくれる。しかし、
「なあ、どうして無印がないんだ?」
 彼女のだしたDVDは2枚だけ。貸したのは無印、A’s、Strikersの3枚だったはずなのだが、1枚だけ足りない。DVDの表に記入した文字をみれば、その足りないのが無印であることが分かる。そのことを聞けば、彼女はどうでもいいでしょうと怒ったかのように言う。意味がわからない。
「おい、なんで俺が怒らなければいけないんだ?」
「あれを亮也に返せるわけないじゃない!」
「おい、なんでだよ」
「だって、あれにはわたしの入浴姿が入ってるんだもの」
 問い詰めて見れば、彼女が言うのはそんな答え。無印の内容を思いだす。ああ、言われてみれば温泉に旅行に行った話があったような気がしたが、それがどうしたということだろう。
「入浴姿も何も、あれはアニメだろ」
 確かにそのようなシーンはあったが、あれは絵だ。彼女の姿がそこに映っている訳ではない。
「それでも、あれは私なのよ」
 だが、こちらの言い分も何のその。絶対に返さないと彼女はそっぽを向いた。そこにはこちらの言うことを聞く気が微塵も感じられない。
 俺は今になって彼女にDVDを貸したことを後悔し始めた。彼女はこうなるとてこでも動かないのだ。DVDが戻ってくることははたしてあるのだろうか。心の中で頭を抱えた。

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