第三話 変化、されどまだ日常は続く
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キュッ キュッ
客が去った店内、『Da Sein』の店主−四ッ谷大輝−は一人、カップを布巾で拭いていた。
白の陶器の器が真っ白になっているのを確認するとそのまま棚へと移す。
「ははっ」
そして、彼は笑った。別におかしいことが今あったのではない。思いだし笑いだ。
思い出しているのは今しがた出ていった二人の高校生。彼らはただの幼馴染みだと、特に男の子のほうが言い張っていたが、二人が好き合っているのは誰の目から見ても明らかだろう。
今の関係が壊れるのが怖くてその一歩を踏み出すことができないといったところか。まさかそんな状況が生で見られる日が来るとは思っていなかった。長生きはするものだと見た目二十台の男は呟く。ただ一つ彼が気になるのは…
「あの男の子。
どこかで会った気がするのだが… 」
彼はそう言った後、気のせいかと再び作業を再会した。